私は普段、自己紹介をする時にこう話しています。
コーチングも、カウンセリングも、コンサルティングも、講師も全部できます。
でも、自分がやることが変わるわけではなくて、相手の立場や関係によって“出し方”が変わるだけなんです。
この言葉は、私の支援スタイルの本質をそのまま表しています。
私は「技法を切り替えている」わけではありません。
コーチングも、カウンセリングも、コンサルティングも、教育者的な視点も、最初からひとつの流れとして“同時に働いている”感覚に近いです。
相手が何を求めているか、どんな状況に置かれているか、どんな関係性がその場にあるか。
それによって、自然に“どの側面が前に出るか”が変わるだけです。
なので、私は「今はコーチングをしている」「ここからはコンサルティングに切り替えよう」と意識しているわけではありません。
ただ、目の前の人の状況に合わせて、自然と必要な関わり方になります。
そして、こうしたスタイルになったのには私特有の背景があります。
今でこそ、コーチングやカウンセリングといった心理学の分野の資格を多数保有し、理論や技法も体系的に学んできましたが、私の場合は、コーチングにしてもカウンセリングにしても、学ぶよりも何年も先に、実践していたという経緯があります。
つまり、私の支援スタイルは「学びによって形成されたもの」ではなく、実践の中で自然に身に着けていたものに、後から理論が追いついてきた形です。
原点 ─ コーチングを学ぶ前に始まっていた実践
私が「技法を切り替えるのではなく、自然に重なり合う」という支援スタイルになった理由は、コーチングを学ぶよりもずっと前に、実践の場が突然訪れたことにあります。
USCPAとして会計事務所に勤務していた頃、ある日、上司からこう依頼されました。
「クライエントの社長を、社会復帰させてほしい」
当時の私は、コーチングもカウンセリングも学んでいませんでした。当然、心理学の資格も技法も持っていません。
ただ、状況は非常に複雑で、切実でした。
その会社は家族経営で、先代社長が急逝し、息子が事業を継ぐことになったものの、息子さんは社会人になってから引きこもりになり、会社に出社できない状態が続いていました。会長としてお母さまがいらっしゃいましたが、重い病気を抱え、息子さんのことを深く案じていました。
そしてなぜか、支援の役割は私に託されました。
私は専門家ではありませんでしたし、「できる」と思っていたわけでもありません。ただ、目の前の状況に対して、逃げずに向き合うしかありませんでした。
何をしたら良いかも分からない私が唯一心掛けることができたのが、姿勢でした。
上から目線にならない
憐れまない
尊厳を守る
本人のペースを尊重する
無理に変えようとしない
この姿勢だけは、絶対に崩さないように心がけました。
最初に伝えた言葉は、今でもよく覚えています。
「月に1回、私が訪問する時は出社して頂けませんか。会社のことだから、社長と話したいんです。」
強制ではなく、選択肢を奪わず、役割をさりげなく提示すること ー 後から学んだミルトン・モデルと呼ばれる構造そのものですが、当時の私は理論を知らず、ただ自然にそうしていました。
この関わりをきっかけに、少しずつ変化が起きました。
私が来ない日でも出社するようになり、社員と一緒に外に出られるようになり、やがて、マスクを外して人と接するようになりました
当然、当時の私は「治そう」としたわけではありません。本人がご自身のペースで社会に戻れる“場”をつくったという感覚すら持っていませんでした。
ただ、尊厳を守りながら関わり続けた(それも当時はそこまで言語化できていませんでした)結果として、本人の内的世界が少しずつ変化していったのだと思います。
こうして、会計士としてのコンサルティングに、コーチングとカウンセリングの要素も交えた支援を、自然と提供することになっていました。
この経験が、私の支援スタイルの原点になりました。
現在 ─ 同じ構造で実践している支援
私の支援スタイルは、原点の経験だけに依存しているわけではありません。
あの時に自然に発揮されていた「重なり合う支援」は、今も同じ構造で現れています。
最近の例で言えば、ある経営者とのセッションが象徴的でした。
最初は、DiSCのアセスメントのフィードバックを行う予定でした。行動傾向の特徴や、意思決定の癖についてお伝えする、いわゆる「いつものアセスメントのフィードバック・セッション」です。
しかし、話を進めていくうちに、場の流れが自然に変わっていきました。
行動傾向の話から、その方が置かれているビジネスの構造の話へ。
ビジネス構造の話から、意思決定の背景にある価値観や自己概念の話へ。
そして気づけば、コーチングとコンサルティングが重なり合い、エグゼクティブ・コーチングのセッションになっていました。
私は「ここからはコーチングに切り替えよう」と意識したわけではありませんし、「今はコンサルティングをしている」と自覚していたわけでもありません。
ただ、目の前の経営者が抱えているテーマに合わせて、必要な関わり方が自然に前に出てきただけです。
アセスメントのフィードバックが、そのままコーチングに移行し、さらにコンサルティングの要素が重なり、最後は自己概念の再構築に至る。
この流れは、私の支援が状況に合わせて自然に重なり合うことで、結果として生まれたものだと感じています。
エグゼクティブに提供している価値
エグゼクティブの方々が抱えるテーマは、単なる行動の問題でも、単なるビジネスの問題でもありません。
組織の構造、事業の方向性、意思決定の癖、価値観、役割、心理的な負荷──こうした複数の領域が同時に存在し、互いに影響し合っています。
そのため、ひとつの技法だけで扱える範囲には、どうしても限界があります。
私は、コーチング、カウンセリング、コンサルティング、教育者的な視点を、状況に応じて自然に重なり合わせながら、ひとつの流れとして扱っています。
行動の話をしていたはずが、気づけばビジネス構造の話になり、そのまま価値観や自己概念の話に移り、最後は意思決定の再設計につながる。
これは、技法を切り替えているのではなく、複数の視点が自然に重なり合う支援だからこそ生まれる流れです。
エグゼクティブの方々は、複雑な状況を同時に抱えています。
だからこそ、支援の側も複数の領域を同時に扱える必要があります。
私が提供している価値は、技法そのものではなく、この「重なり合う支援の構造」を通じて、複雑さをそのままの形で扱えることにあると感じています。
支援が状況に応じて自然に現れてくる理由
私が支援の場で、コーチングや助言、構造の整理、心理的な理解など、複数の側面を自然に扱っているのは、特別な技法を使っているからではありません。
これまでの経験や関わり方の癖が重なり、結果として「状況に応じて必要な側面が自然に現れてくる」形になっていると感じています。
ここでは、その背景をいくつかの視点から整理してみます。
1. ひとつの領域だけを扱うことが難しい性質
私は、目の前の出来事をひとつの領域だけで捉えることがあまり得意ではありません。
行動の背景には何があるのか。
組織の構造はどう影響しているのか。
心理的な負荷はどこから来ているのか。
価値観や自己概念はどう関係しているのか。
こうした複数の層を同時に見る癖が、自然と身についていました。
そのため、支援の場でも「行動だけ」「心理だけ」「構造だけ」という関わり方になりにくく、状況に応じて必要な側面が特に意識しなくても現れてきます。
2. 役割が常に複数だった経験
これまでのキャリアでは、会計、組織開発、人の行動・心理、経営企画──複数の領域を同時に扱う場面が日常でした。
財務の相談を受けながら、意思決定の背景にある価値観の話になり、組織構造の課題に触れ、人間関係の影響を整理する。
こうした「複数の領域が同時に存在する状況」が当たり前だったため、支援の場でも自然と複数の側面が前に出てきます。
3. 姿勢が先にあり、技法は後から整理として学んだこと
私は、支援の場で技法を当てはめるよりも、相手の尊厳やペースを尊重する姿勢を大切にしてきました。
原点の経験でもそうでしたが、当時はコーチングやカウンセリングの理論を学んでいませんでした。
だからこそ、
上から目線にならない
無理に変えようとしない
本人の内的世界を尊重する
その場に必要な関わり方を選ぶ
といった“姿勢”だけを頼りに関わっていました。
その後、実践を重ねてから技法を学んだため、技法を枠として当てはめるのではなく、実践の中で自然に行っていた関わり方に後から理論が追いついてきた形になっています。
その結果、技法を「使い分ける」という発想ではなく、状況に応じて必要な側面が自然に現れてくる支援になっています。
4. 人と組織を同時に扱うことが自然だった
人の行動だけを見ることも、組織の構造だけを見ることも、私にはどこか不自然に感じられます。
人と組織は常に影響し合っているため、どちらか一方だけを扱うと、どうしても視点が偏ってしまいます。
そのため、支援の場でも人の内的世界と組織の構造を同時に扱うことが自然な流れとして現れてきます。
支援の形は「意図して作るもの」ではなく「結果として現れるもの」
こうした背景が重なっているため、私の支援は技法を切り替えるのではなく、状況に応じて必要な側面が自然に現れてくる形になっています。
これは、意図して作り上げたものではなく、これまでの経験や姿勢、関わり方の癖が重なった結果として自然に生まれているものだと感じています。

これからのコーチングについて
私が提供しているコーチングは、技法を組み合わせて作り上げたものではなく、これまでの経験や姿勢が重なった結果として状況に応じて自然に現れてくる支援の形です。
そのため、「コーチング」という言葉で表現しながらも、実際には、心理、構造、関係性、ビジネス上の意思決定など、複数の領域が同時に扱われることが少なくありません。
これは、コーチングの枠を外れているというより、むしろ コーチングの範囲を広げている と感じています。
エグゼクティブの方々が置かれている状況は、行動だけでも、心理だけでも、組織構造だけでも、経営判断だけでも説明できない複雑さがあります。
その複雑さをそのまま扱うためには、コーチングの側も、必要に応じて複数の側面が自然に前に出てくる形がどうしても必要になります。
これからも、技法を当てはめるのではなく、相手の尊厳やペースを尊重しながら、その場に必要な関わり方を選ぶ姿勢を大切にしていきたいと思っています。
私にとってコーチングは、意図して形を作るものではなく、関わる方との対話の中で、結果として自然に現れてくるものです。
その自然さを保ちながら、これからも、エグゼクティブの方々が抱える複雑さをそのまま扱えるコーチングを続けていきたいと考えています。
